東京大学大学院・総合文化研究科・超域文化科学専攻
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岩本通弥 | 現代民俗学と語り研究 |
福島真人 | ランドスケープ-文化、アート、テクノロジー |
箭内匡 | バイオミミクリーと人類学 |
田辺明生 | 現代インド論--歴史人類学的視点から |
渡邊日日 | 博士論文ライティングアップ・セミナー |
関谷雄一 | 農業と文化人類学 |
津田浩司 | (サバティカルのため授業なし) |
宮地隆廣 | ラテンアメリカを中心とする途上国比較政治の文献講読 |
名和克郎 | 言語人類学入門 |
藏本龍介 |
(在外研究中のため授業なし) |
森山工 | フランスにおけるポスト植民地体制の展開 |
岩本通弥 [研究内容はこちら]
現代民俗学と語り研究
民俗学の古典である柳田國男『明治大正史世相篇』(1993=1931)を講読に並行して、文化人類学の一部門あるいは隣接科学として展開してきた民俗学(Folklolistics,Folklore-Sutudies, Volkskunde)の学史をふまえることを目指し、アルブレヒト・レーマンの意識分析・語りの理論を中心としたドイツ民俗学の動向、及び日本側の対応を概観する。
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福島真人 [研究内容はこちら]
ランドスケープ-文化、アート、テクノロジー
ランドスケープは、近年のRoutledge社 の浩瀚なLandscape Studies というハンドブックに代表されるような、学際的な研究分野で、文理にまたがった多くの議論が存在する。その中には建築学や都市工学、庭園学といった理工学系諸分野のみならず、人文系諸科学(歴史学、社会学、人類学、人文地理学、政策学等)、さらには様々なアート関係の分野がふくまれ、自然、社会/文化、アートの複雑な絡み合いに関心がある人にはもってこいの分野である。
このランドスケープという概念は、従来「景観」と訳されることが多く、基本的に環境がもつ審美的な側面に関心が限定されてきた。また”Land”-scapeという部分に代表されるように、農村的なもの、というニュアンスが英語にも残っている。しかし近年の議論では、「地域社会の法的、慣習的な仕組み」という意味の原語が、風景画の流行から美術化され、美としての環境(庭園)という形で、法とアートが複雑に交錯してきたとされる。更に近年では、都市のテクノロジー的環境を都市のランドスケープとして再考する、いわゆるLandscape urbanism という潮流も存在し、都市のテクノロジー・インフラがもつ審美的可能性が議論されている。テクノスケープといった新たな観点も興味深い。
このようにランドスケープを巡る議論は、法(地域社会)、アート(風景画)、自然(農村)、テクノロジー(都市インフラ)といった諸側面が複雑に交錯する分野であり、近年の景観論争(例えば無電柱化論争)に代表されるように、政策的イシューともなりうる。本演習では、こうした諸要素の絡み合いを、特にSTS(科学技術社会学)、社会・人類学、歴史学、アート研究といった視点を交差させ、その代表的な論点にかかわる本、論文を講読し議論するものである。
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箭内匡 [研究内容はこちら]
バイオミミクリーと人類学
「バイオミミクリー」(生物の模倣)は、ジャニン・ベニュスの1997年の著作を発端として、近年広く知られるようになった概念だが、科学的・工学的応用を主眼とする「バイオミメティクス」とは異なり、自然の模倣が人間自体を変化させていくことを視野に入れている点で、人類学的にも興味深い。自然の模倣がかつての人類に広く見られた特徴であるという意味で、それは古典的な人類学にも通じており、同時に今日の科学技術とも関わっている。
この授業では一方でベニュスの著作と近年のバイオミミクリーに関する文献を読み、他方では、いくつかの人類学のアクチュアルな議論を取り上げて、それらの反響関係の中で人類学的考察を進めていきたい。「バイオミミクリーと人類学」というタイトルにもあるように、授業の目的は「バイオミミクリーについて」掘り下げていくことではなく、むしろ、バイオミミクリーに触発されながら今日的な人類学の方向性を考えていくことである。これまでの授業との連続性から、「植物人類学」的なテーマも多く出てくるはずである。
関連するテーマで研究している(主として文化人類学の)大学院生による、独自の視点からの発表も含めることを想定している。
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田辺明生 [研究内容はこちら]
現代インド論--歴史人類学的視点から
本授業は、大きく変わりつつある現代インドの様相を理解するために、どのような新たな視角と枠組が必要かを歴史人類学的視点から検討する。現在のインドの動態を支えるメカニズムを理解するにあたっては、グローバルな文脈と国家レベルの変容をおさえながら、現代インドがつくってきた独自の発展のかたちに着目する.そして地域固有の〈生態環境〉のなかで発展してきた〈政治経済〉〈社会文化〉の構造と歴史的変化を長期的な視野において検討する。そのうえで,インド独自の発展径路やデモクラシーのかたちを総合的視野から明らかにし、それが現在の政治経済社会の活況そして問題といかに結びついているかを把握することを試みる。それは、欧米の発展モデルとも東アジアのそれとも異なる「南アジア型の発展径路とデモクラシー」のありかたを探る試みとなるであろう。
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渡邊日日 [研究内容はこちら]
博士論文ライティングアップ・セミナー
原則として、民族誌の形をとった博士論文を執筆している文化人類学コース博士課程の院生を対象としたゼミ。フィールドワークを終えてからどのようにして、〈まとまりのある文の塊〉を形作っていくか、幾つかの事例を読み解きつつ、〈実践〉を行い、参加者同士で共有し、そしてさらなる次の〈実践〉へとつなげていきたい。受講希望者は事前にメールを送ること。具体的にどう行っていくかから受講者と話をすることから始めたい。
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関谷雄一 [研究内容はこちら]
農業と文化人類学
昨今の食への関心は、人々に農業について改めて見直すきっかけをつくった。文化人類学が古くからフィールドにしてきたのは農村や漁村など、農業を営む人々の社会であった。本講座では、農業に関する文化人類学の先行研究を取り上げながら、学説的潮流をつかみ、最新の研究についてもその位置づけを確かめることを目的とする。
世界の食糧安全保障確保と貧困撲滅に大きな役割を果たすと期待されている家族農業への理解・施策そして発展的展開を求めて国連が2019年から2028年までを「家族農業の10年」と定めた。この国際的な認識に関しても、文化人類学の視座から考察していくことを目指す。
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津田浩司 [研究内容はこちら]
(サバティカルのため授業なし)
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宮地隆廣 [研究内容はこちら]
ラテンアメリカを中心とする途上国比較政治の文献講読
最近10年のラテンアメリカ諸国の政治に関する主要な議論の動向を理解し、比較の視点から批判的に検討できるようになること。
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名和克郎 [研究内容はこちら]
言語人類学入門
社会・文化人類学者が行うフィールドワークにおいて通例大きな比重を占めるのが、言語を用いた情報の収集である。その過程で得られる「現地語」による資料は、言語学者の抽出する文法にも、翻訳された意味にも解消されない様々な情報を含み、多様な分析に対して開かれている。ここでは、音声学、音素論から会話分析に至る言語データの様々な取扱い方を、出来る限り具体的な形で紹介すると共に、「言語人類学」と大まかに総称し得る一連の研究を、社会言語学をはじめ周辺諸学の動向も踏まえつつ検討し、人々が行う言語を用いたやりとりから見えてくる言語と社会・文化をめぐる複雑な関係について議論していきたい。
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藏本龍介 [研究内容はこちら]
(在外研究中のため授業なし)
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森山工 [研究内容はこちら]
フランスにおけるポスト植民地体制の展開
1960年代から70年代にかけて、フランス海外県では女性の身体に国家が介入し、本人の同意を得ない堕胎術や不妊術が行われて、一大スキャンダルを引き起こした。これは、かつてフランスによる植民地支配を受け、今や海外県としてフランス国家の一部をなす地域にあって、ポスト植民地体制がいかに植民地体制を引き継ぐものであるのかを示している。それと同時に、フランス革命に淵源をもつフランス共和主義が、逆説的ながらも、それに内在するものとしていかに植民地主義と不可分であり、ポスト植民地体制にあっても不可分であり続けているのかを示してもいる。
本授業では、フランス海外県のレユニオン(インド洋南西域)を主要な舞台として取り上げつつ、ポスト植民地体制における植民地主義の持続、共和主義と植民地主義との共犯性、国家と「身体」、とりわけ「非白人」であり、かつ「女性」である「身体」との関係を検討する。また、そこにおけるフェミニズムの位置取りについても批判的な検討を加える。
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